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回復期リハビリテーション
病棟への思いと提言

石川誠が掲げた
回復期リハビリテーション
病棟への課題

引用
1)『全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会機関誌』
『回復期リハビリテーション』
2)『輝生会20周年記念誌』第Ⅱ部
石川 誠「ことば集」―忘れられない思い出・エピソード

1997年リハビリ砂漠の東京で成功して初めてリハビリテーション医療は全国に普及する

石川さん「東京はリハビリ砂漠だ。近森でできても、都会ではできないといわれる。東京で成功して初めて、全国どこでもリハビリテーション医療は普及する、そうだろう。これからは近森のようなものを全国に作る。一緒に高知から東京に行こう」   

2004年孤りぼっちにしない支援を総力戦でできているか

社会参加の本質は、孤独や独りぼっちにしない支援を総力戦できちっとできているかということにあるのではないか。その上で自己決定を支援できるか否かだ。では、そのためにリハビリテーション医療サービスは本当にできるだけのことを尽くしているのか。まだまだ発展途上にあると言わざるを得ない。(2004年11月 リハビリテーションビリテーション・ケア合同研究大会 北九州2004「鼎談」での発言)

2004年地域にどうやって密着していくか 

地域にどうやって密着していくか。いろいろやってみて、やはりテーマは「小規模」「地域密着」「多機能」だと思う。ただし、福祉サービスに限ってではなくあくまでも医療機能の中にリハビリテーション機能がきちっと詰まっていて福祉サービスが同時にある。そこで外来・通所・訪問・短期入所のサービスが24時間365日稼働している。そういう在宅総合ケアセンターでなければ機能しない。(2004年11月 リハビリテーション・ケア合同研究大会 北九州2004「鼎談」)   

2007年回復期リハ病棟の課題

(2007年10月、第5回医師研修会での講演「回復期リハビリテーション病棟の存在価値」の終わりにまとめとして以下の課題を提示)  

2008年管理栄養士は回復期リハビリテーション病棟のチームの一員として 

かつて管理栄養士は他職種がそれぞれの砦を築いていたのと同じく厨房に閉じこもりがちで情報ネットワークの蚊帳の外だった。しかし、今からは回復期リハビリテーション病棟のチームの一員として日々の情報伝達・共有のネットワークに進んで加わっていくことが大切。カンファレンスの席には必ずいて今日はどんなコメントをするかPT・OTが気にしている、スタッフの朝夕の集まりにも必ず顔を出す、そういう存在になってほしい。(2008年9月 第2回栄養士・管理栄養士研修会での講演「回復期リハビリテーション病棟の成果と栄養士の役割」)   

2009年看護がだめならすべてだめ
~切磋琢磨して

今後毎年100名以上が認定されることになるが、回復期リハビリテーション病棟は6万床に届く勢いで増えている。研修会で常々申し上げているが、この病棟は「看護がだめならすべてだめ」。いくらPT・OT・STを大量に投入しても、基盤となる看護がしっかりしなくてはPT・OT・STはいい仕事ができない。回復期リハビリテーション病棟というのは、そういう病棟だと思っている。……皆さん方には認定されたあとも切磋琢磨していただいて、この病棟を世界に冠たるものにする底力を発揮していただきたい。……認定者は回復期リハビリテーション病棟の実務を2年半行わなくてはいけないとか、いろいろなポイントをしっかり貯めないとせっかくの認定が失効してしまうとか定められている。ぜひ、頑張っていただきたい。ただ、頑張るだけではあまりにも気の毒なので、各病院で事情は異なるとは思うが、少なくとも初台リハビリテーション病院、船橋市立リハビリテーション病院ではこの認定をちゃんと給料に上乗せします。このことをぜひもち帰って「会長の石川がそう言っていた」と理事長、院長によろしくお伝えいただきたいと思います。(2009年11月 回復期リハビリテーション看護師1期生認定証授与式での挨拶で)

2010年増収分の収益をスタッフの増員に

回復期リハビリテーション病棟は今回評価され、経営は改善すると思うが、問題はその収益を何に使うか。医師、ST、ソーシャルワーカーの病棟専従化や重度患者に対応した看護・介護人員の増員に使わなければ2年後の改定でまた厳しい見直しが行われると考えるべき。増収分の収益をスタッフの増員に投資していただきたい。(2010年2月 第15回研究大会in静岡三島 基調講演「回復期リハビリテーション病棟の10年と今後への期待」)   

2010年保守的なタテ割り組織は過去のもの

かつて病棟はナースの砦であった。「患者さんは24時間私たちが看る」、その心意気は立派だ。だが、現在の配置人員ではとてもそれを守り切れない。ほかのスタッフをどんどん入れて一緒にいいケア体制を作る時代である。ビルのテナントのような部署ごとのタテ割りだけの組織はもう過去のものである。保守的な体制からチーム医療へ一気に乗り出すためには病棟そのものに多職種がしっかりと根を張る必要がある。(2010年2月 第15回研究大会in静岡三島 基調講演「回復期リハビリテーション病棟の10年と今後への期待」)   

2010年入院患者の重症度に応じた人員配置を

基本的ケア、良質なケアを行うためには看護・介護の人員配置が極めて重要である。旧態依然とした日勤・夜勤の看護・介護人員配置はリハビリテーション的ではない。必要な時に必要なスタッフ数を確保するための努力を各病棟がすべきである。ここはまだまだ努力の余地がある。ケアで高い質を保つには入院患者の重症度に対応した人員配置をとるべきである。そして、早朝・準夜帯、土・日・祝日の適切な人員配置は当協議会の今後の大きなテーマである。(2010年2月 第15回研究大会in静岡三島 基調講演「回復期リハビリテーション病棟の10年と今後への期待」)  

2010年リハビリテーションの量的増加を~制度に現場が追いついていない

当協議会では設立当初から「土・日・祝日、盆・暮れ・正月もリハビリテーションを行おう」と旗を振ってきた。国は1日9単位のリハビリテーションを評価している。ところが、現場がそれに追いついていない。まだまだリハビリテーションサービスは増やすべきなのである。(2010年2月 第15回研究大会in静岡三島 基調講演「回復期リハビリテーション病棟の10年と今後への期待」) 

2010年回復期リハ病棟の課題

(2010年8月、第8回医師研修会での講演「回復期リハビリテーション病棟が目指すもの」の終わりにまとめとして以下の課題を提示) 

    

2010年看護の基本的ケアは回リハ病棟の品格

回復期リハビリテーション看護師になられた皆さんが中心となり力を発揮され看護の基本的ケアを高水準で維持・実践する病棟を目指していただきたい。
看護の基本的ケアは回復期リハ病棟の“品格”であると思っている。多職種で構成されるチームの全員から信頼される看護師、そして、明確な自立支援の看護技術を有する看護師として存分に活躍していただきたい。(2010年11月、第3回回復期リハビリテーション看護師認定証授与式での講演で)  

2011年まずは各ステージが自らの役割を全うせよ、連携はそのあと

わが国の医療・介護・福祉、いずれに関しても重要なことは、無駄をなくし効率的なサービス提供体制を構築することである。それには急性期、回復期、生活期に及ぶ各医療分野がそれぞれの専門性をもってその役割を果たすことが求められる。それぞれが役割を果たした上で各分野が連携し、シームレスなサービス提供体制を構築する、これが本来の姿だが、昨今はどうも役割を果たす以前に連携ばかり叫ばれている気がしてならない。連携するには各分野がまず自らの役割を全うすべきである。そうしなければ単に「追い出す」というふうに言われかねないであろう。実際、きちっとした目に見える関係を構築するにはそれ相応の時間と努力が必要になる。脳卒中医療における回復期リハビリテーション病棟の役割分担にしても、病状の安定化と再発予防、高血圧・心疾患・糖尿病など基礎疾患のコントロールといった亜急性期の医療体制をしっかりとることは当然の義務である。また、合併疾患として肺炎や低栄養、不動(廃用)症候群等の予防・治療、加えて機能障がい・ADLの改善と生活機能の再建、これらを同時にすべての患者に対し行う役割がある。その上で、急性期や生活期と手をつなぐ、そうありたい。(2011年2月 第17回研究大会in長崎 特別講演「同時改定を見定めた課題と展望」)

    

2011年急性期、回復期、生活期3ステージそれぞれに構造的問題

急性期、回復期、生活期の3ステージのリハビリテーション医療には各々まだまだ問題点がある。急性期の救急病院は、救急患者の確実な受け入れ、迅速な確定診断と専門的治療に加え、早期離床と早期リハビリテーションの推進をぜひお願いしたい。早期離床を推進するにはなんといっても急性期の看護スタッフにADLへの見識を高めてもらう必要がある。医療処置にばかり目を配っていてはうまくいかないのである。早期リハビリテーションを行うには現行のPT、OT、ST配置ではあまりに少ない。リハビリテーション専門医の配置も少ない。公立病院では総定員法により県、市議会などを案件が通過しないかぎりPT、OT、STの人員を増やせない事情がある。厚生労働省は診療報酬制度で早期リハビリテーション加算をつけ、盛んに急性期リハビリテーションの推進を誘導している。だが、そもそも急性期の病院にはPT、OT、STがあまりいないのであるから、加算をつけても直ちに早期リハビリテーションの推進にはつながらない。診療報酬による誘導ではなく、もっと構造的な問題に楔を打ち込まないと状況はよくならないだろうと思っている。(2011年2月 第17回研究大会in長崎 特別講演「同時改定を見定めた課題と展望」)

2011年質の向上一途に邁進

今期限りで会長を降りることを主張しましたが、「もう1期どうしても」ということですので、不肖石川が来期を務めさせていただきます。……量的整備はとりあえずひと段落。質の向上一途に今後の2年間邁進してまいります。(2011年2月 第17回研究大会in長崎 会期中行われた平成22年度定期総会役員改選後、会長3選の挨拶)

2011年退院後のフォローアップ体制の充実を

回復期リハビリテーション病棟を退院後、在宅生活は継続されているか?
その状態はどうか? いかに支援するか?―外来通院リハ、通所リハ、訪問リハ、訪問看護、短期入所リハ……。病院として、退院後のフォローアップ体制を充実すべきではないか。(2011年7月、第9回医師研修会講演「回復期リハビリテーション病棟の目指すもの」)

2011年損得抜きで、日本の医療を塗り替えていきたい

多くの方々のご支援をいただきここまでたどり着くことができました。(2010年度は約29万人の患者が回復期リハビリテーション病棟を通過、平均72日の入院日数で全体の71%が自宅に復帰している実態を報告して)誇っていいと思っている。これもひとえに(来賓の面々に)皆様がたの日々の温かいご支援があったからこそ……(会場後方の協議会理事、委員会メンバーを指して)損得抜きで、日本の医療を塗り替えていきたい、その思いを一身に背負って日々頑張っている次第です。(2011年10月 協議会設立10周年記念祝賀会挨拶)

    

2011年「絶対見捨てない」
~チームで支援を行う拠点が地域には必要

セラピストマネジャー第1期生 独居で認知症、後期高齢者の患者さんの退院支援をするときすごく悩みます。今後、地域包括ケアの構築を進めていく際、具体的にどんなサービスがあるとよいでしょうか。また、回復期リハビリテーション病棟に入院する段階でどういうサービス提供や家族指導が望ましいでしょうか?
石川 独居で重度だとなかなか一人で家に帰るだけのサポートは介護保険では十分ではありませんから、在宅で何とかやっていくという選択をしていただくときに、在宅総合ケアセンターとか地域リハビリテーション支援センターとか、ともかく「そういう方々を絶対見捨てない」という、チームで支援を行う拠点が必要だと思うんですね。うちの法人では、在宅総合ケアセンター元浅草と在宅リハビリテーションセンター成城という2つの在宅サービスの拠点に約100名のスタッフがいて、ベッドがあって外来診療、訪問診療をやり、外来リハビリテーション、通所リハビリテーション、訪問看護、訪問リハビリテーションをやって、ケアマネジャーがいます。これは以前、近森リハビリテーション病院のすぐそばに立ち上げた在宅総合ケアセンター近森の東京版です。ぜひそういう拠点を回復期リハビリテーション病棟のある病院が数か所ずつ作っていただきたいんです。全国に今、回復期リハビリテーション病棟をもっている病院は1,000病院ぐらいありますから、1つの病院が3~5か所作ってくれれば全国に3,000~5,000か所の拠点ができます。そこへ回復期リハビリテーション病棟に勤めていたスタッフがバアーっと異動してチームを組み、24時間態勢で在宅ケアをがっちり支える、そういう仕組みができればどんな人でも在宅に帰せるようになります。(2011年11月 回復期セラピストマネジャーコース第1期講義「回復期セラピストマネジャー真剣質疑」)

2011年回復期リハビリテーション病棟は「一里塚」

要するに、回復期リハビリテーション病棟は「一里塚」でしてね、ここで終わんないんですよ。帰ったあとのサポートをどうするんだというところは当協議会の一大テーマです。「われわれは回復期リハビリテーションの中身も大事だけれどもその先のことも大事ですよ」というわけです。キーワードは「24時間」です。そういう拠点を、回復期リハビリテーション病棟をもっている病院が作ってくれれば安心して帰せます。やれ認知症だ、やれ独居だなんだって、そんなものは全然(家に帰せない)条件でも何でもない、拠点づくりを進めないうちから「重度だから」「独居だから」というのはまずいんじゃないかなと思います。実際に拠点を作ればたぶん手応えは感じるはずです。ですから、回復期リハビリテーションのところだけで大騒ぎしていられないわけですよ。その先をやらなくちゃいけない、その先で動けるスタッフを育てなくちゃいけない。(2011年11月 回復期セラピストマネジャーコース第1期講義「回復期セラピストマネジャー真剣質疑」)

2011年生活期のスタッフが一緒になってやれる仕組みを

今地域に出ている人たちは皆やっぱり孤立化しているんですよね。訪問リハビリテーションのスタッフ、一生懸命やってくれていますよ、一時の約3倍に増えていますからね。だけど、訪問リハビリテーションの人たちは訪問リハビリテーションのPT・OT・STだけで団子になっていて、訪問看護の看護師さんたちとはっきりいってそううまくいっているわけじゃない。ヘルパーなんてもう全然別の世界にいます。それじゃダメですよ。それらが入り乱れるように一緒にやるような形、仕組みをぜひ皆さんで考え、立ち上げてもらいたい。そうすると回復期リハビリテーション病棟もさらに使いやすい回復期リハビリテーション病棟になると思います。(2011年11月 回復期セラピストマネジャーコース第1期講義「回復期セラピストマネジャー真剣質疑」で1期生の質問に答えて)

2012年リハビリテーションの成果追求 もっとシャープに

生活期のリハビリテーションの成果とは何かを巡っては、BIで調べてもFIMで調べても要介護度で調べても明らかな差が出ていない。今回、厚労省は通所リハビリテーションと通所介護について調べたが、2つのサービスの間には「リハビリテーションの成果」という点で明確な差が見られなかった。ということは、「差がないのになぜ通所リハビリテーションのほうが通所介護よりも料金が高いのか」と世間から言われることにもなるであろう。つまり、「リハビリテーションの成果とは何か」という部分を今後はもう少しシャープに追求していかないと、われわれは足元を掬われることになる。(2012年3月 2012年度診療報酬改定説明会での講演で)

2012年廃用症候群に2種~明確な判定基準が必要

私は廃用症候群についてはどうも2種類あるような気がしている。すなわち、顕著な改善の見込まれる例と改善が乏しい例である。これらが両方とも「廃用症候群」の病名で回復期リハビリテーション病棟にどんどん入ってくる。リハビリテーションをたくさん実施したのに「結局よくなりませんでした」では、回復期リハビリテーション病棟の面子がない。廃用症候群の明確な判定基準が今後必要になるだろうと思われる。(2012年3月 2012年度診療報酬改定説明会での講演で)

2012年確固たる成果を求められる時代に確実に入った 

PT・OT・STの国家資格保持者は2000年には4万5,000人だったが2012年には18万人と、12年前の4倍に達している。PT・OT・STの人員増により診療報酬・介護報酬はうなぎ昇りでありPT・OT・STのの人員は今後もさらに増加することは間違いない。しかし、国は財源不足であり今後、個別リハビリテーションの単価抑制という最後の手段に出る可能性も除いて考えてはならない。そうさせないためには「リハビリテーションの成果を明快に出す」ことがどうしても必要である。リハビリテーション医療は確固たる成果を求められる時代に確実に入った。リハビリテーション医療は量的整備から質的整備の時代に移り、今までは追い風も吹いた。しかし、これからは向かい風の時代が来るという覚悟が必要である。成果なきリハビリテーション医療は衰退へ向かう。機能の改善・ADLの向上、入院日数の短縮、在宅復帰率の向上、生活活動性の向上、介護負担の軽減、在宅生活の継続――これらを支援できる「結果の出せるリハビリテーション医療」の提供をぜひお願いしたい。(2012年3月 2012年度診療報酬改定説明会での講演で)

2012年入院患者の平均看護必要度に応じた看護配置評価の仕組みが必要 

回復期リハビリテーション病棟を運営していながら看護・介護スタッフが従来の療養病床における老人看護と同じケアしか行っていないようなケースがある。自立支援の看護・介護を積極的にやっていただかないと患者さんはよくならない。回復期リハビリテーション看護のさらなる専門性の発揮が必要である。現在、回復期リハビリテーション看護師の認定制度を作り研修をたくさん行ってはいるが、それでもまだまだ足りない。回復期リハビリテーション看護の標準化・普及が急務である。入院患者の平均看護必要度に応じて看護配置を明確に評価する仕組みも必要である。(2012年3月 2012年度診療報酬改定説明会講演)

2012年若いスタッフたちに退院後の在宅生活経験させて

回復期リハビリテーション病棟をもつ病院として在宅支援のサービスをぜひ整備・充実していただきたい。在宅と病棟との連携では人のローテーションや教育研修システムの工夫など方法はいろいろあると思う。回復期リハビリテーション病棟のスタッフがまだまだ若いことは共通の課題。早く退院後の患者さんの在宅生活を経験することに前向きに取り組んでいただくことが大切だ。(2012年11月 リハビリテーション・ケア合同研究大会 札幌2012での主催団体シンポ「在宅支援~その人らしい生活を目指して・回復期リハビリテーション病棟でできること」座長発言)

2012年医師の訪問診療~回リハ病棟の新しい常識に 

基本的に回復期リハビリテーション病棟を受け持っている医師は外来と訪問診療を週に半コマずつ午前か午後に行うことが義務づけられているが、(シンポジスト、札幌西円山病院の)橋本さんは毎週水曜日の午後5~6人の方を、大会長の横串先生は毎週3回2人ぐらいずつ訪問されているとのこと。2人のリハビリテーション専門医が常時1週間に10数名の方々を訪問している。病棟だけで診ているのではない。こうした医師の姿はその病院の雰囲気を大きく変えるんだろうと思う。回復期リハビリテーションの医師の“常識”にしたい。……(中略)……回復期リハビリテーション病棟の医師はリハビリテーションのことは詳しくなければいけない、チーム力で統率しなければならない、全身管理をしっかりやらなければならないというわけで大変に忙しい。その医師に対しさらに「訪問診療を行って」と言うのは過酷だが、これは今やらなければならない。回復期リハビリテーション病棟の医師の方々にはぜひ前向きに取り組んでいただきたい。私からもお願いしたい。(2012年11月 リハビリテーション・ケア合同研究大会 札幌2012での主催団体シンポ「在宅支援~その人らしい生活を目指して・回復期リハビリテーション病棟でできること」座長発言)

2013年リハビリテーション科の専門医が少なすぎる 

リハビリテーション科の専門医は2013年3月現在1,846名。この数は診療科目別の医師数としては救命救急医と並び最も少ない。これだけの人数で日本の1億3,000万人を支援することは不可能である。……(中略)……日本リハビリテーション医学会の指定研修施設は現在、全国に539施設ある。しかし、これらのうち回復期リハビリテーション病棟を開設運営している施設は253病院(46.9%)と半数弱であり当協会会員施設の8割近くが同研修施設の指定をまだ受けていない状況である。(2013年3月 第21回研究大会in金沢での基調講演「回復期リハビリテーション病棟の課題と展望」で)

2013年看護職員配置 まだ十分ではない

一般病棟もしくは療養病棟と回復期リハビリテーション病棟とでは看護・介護ケアの内容に顕著な差がある。回復期リハビリテーション病棟における現行の看護職員配置は必ずしも適切で十分ではないと考えている。スタッフ一人ひとりのリハビリテーション看護・リハビリテーション介護技術を高めるのは当然だが、病床数・重症度に対応して現在よりも手厚い看護・介護人員を配置する必要がある。(2013年3月 第21回研究大会in金沢での基調講演「回復期リハビリテーション病棟の課題と展望」で)

2013年朝夕の看護・介護配置は適正数か

午前7時から8時半前後に行われるモーニングケア、午後5時半から9時半前後に行われるイブニングケアの時間帯の看護・介護配置は適正か、看護・介護職員数の比率の検討、介護職員全体に占める介護福祉士の比率をさらに高める努力もしていただきたい。(2013年3月 第21回研究大会in金沢での基調講演「回復期リハビリテーション病棟の課題と展望」で)

2013年院外にスタッフを送り地域包括ケアへの関与を

在宅ケア・在宅医療におけるキーワードとして、次の5つが挙げられると思う。
1. プライマリ・ケア
2. リハビリテーション・ケア
3. ターミナル・ケア
4. 24時間体制
5. チームアプローチ

地域包括ケアの根幹は介護保険であり回復期リハとして直接の関与は少ない。その中で重要なことは、多職種によるチームアプローチが巧みなスタッフを育成し、地域包括ケアに関与できる場に送ることである。
回復期リハを知らずして在宅ケアを語るなかれ。
在宅ケアを知らずして回復期リハを語るなかれ、である。(2013年5月 第28回PTOTST研修会での講演「地域包括ケアにおける回復期リハビリテーション病院の役割」)

2013年回復期リハビリテーション病棟の医師は専門性を高め

回復期リハビリテーション病棟の医師要件に関しては現在の「病棟専任のリハビリテーション科医師」から以前の「病棟専従のリハビリテーション科医師」に再び戻されることも考えられる。日本リハビリテーション医学会の専門医・認定臨床医の認定を受ける、あるいは病院として同学会の認定施設になるための準備をすべきである。(2013年3月 第21回研究大会in金沢での基調講演「回復期リハビリテーション病棟の課題と展望」で)

2013年サービス水準定めマンパワーを強化せよ

看護・介護の施設基準はあくまで最低基準である。より充実した構造・設備lとケアサービス水準の設定が重要である。

上図は望ましいケアサービスとマンパワーについての基本的考え方である。
従来の病棟では、看護・介護スタッフ数が固定した状態で常に状況変化する対象患者にかかわってきた。これだと、ケアサービス水準は患者の状態により常に変化せざるを得ない。ケアサービスを標準化することは不可能である。これからの病棟で行うべきことは、まず、各病棟が提供するケアサービスの水準を設定する、対象患者が常に変化する条件は変わらないが、その中で、「設定した水準のサービスを例外なく全うするために必要なスタッフ数を確保する、または・および、そのサービスを全うするために患者を選択する。いずれにせよ、マンパワーの強化が必須である。(2013年9月、回復期リハビリテーション看護師認定コース 第7期 講義「入院によるリハビリテーション医療の歴史」)

2014年不十分なスタッフ配置のしわ寄せで寝たきりに

たくさんのスタッフがいれば患者さんをどんどん動かすことができる。「早期離床」である。急性期の病院にPT・OT・STがいれば早くから専門的なリハビリテーションができるが、その配置は十分ではない。看護・介護スタッフとPT・OT・STとのコミュニケーションもあまりうまくいっていない。チームが成熟していない。そのしわ寄せが患者さんに及び、ベッド臥床の時間が増えて寝たきりになる。(2014年6月 第1回介護研修会講演「回復期リハビリテーション病棟での介護の位置づけ」での発言)

2014年介護職は回復期リハビリテーション病棟の環境を有効活用して

回復期リハビリテーション病棟に勤めている介護スタッフの知識と技術は、私は量的にも質的にも最良のものになり得ると思っている。介護の方ばかりで1日中ずっと一緒に仕事をしていると新しい風がなかなか吹かない。回復期リハビリテーション病棟に勤めていると、いいチームなら自ずと医師、看護師、PT・OT・ST、ソーシャルワーカー、管理栄養士……などの専門職と対等に話ができる。彼らがもっている専門知識と技術が学べる。現に皆さんは毎日、大勢のPT・OT・STと一緒に仕事をしている。疾患や病態を踏まえた対応上の留意点、最新の知見に基づく介助のポイントを共有できる環境にいる。それを活用しない手はない。
(2014年6月 第1回介護研修会講演「回復期リハビリテーション病棟での介護の位置づけ」での発言)

2014年介護スタッフの未来は皆さん自身のプロ意識にかかっている

「介護は看護の下にいる」というイメージをまだもっていたらかなぐり捨ててほしい。本来まったく立場は一緒、イーブンである。医師も看護も介護もPTもOTもSTもソーシャルワーカーも栄養士もケアマネジャーもみなイーブンの立場である。このことをよく自覚していただきたいし「われわれはプロの介護スタッフだ」という自覚をもっていただきたい。リハビリテーション介護のプロとして介護の目から評価、アセスメントができる。それを日々記録しサマリーを作る。カンファレンスには常時参加して介護の立場からちゃんとコメントをする。日本中の回復期リハビリテーション病棟の介護の方々にこういう形でやっていただくことを期待している。「介護のプロ」の国家資格は日本にしかない。介護福祉士の制度は日本が世界に先駆けて作った世界に冠たる制度である。「給料がもうちょっと高くならないか」とか「自分たちの発言権がもうちょっと強くならないか」とかいろいろ問題があるかもしれないが、それもこれも今後皆さんがどういうふうに自分たちの仕事にプロ意識をもって毎日進んでいくか、そこにかかっている。(2014年6月 第1回介護研修会講演「回復期リハビリテーション病棟での介護の位置づけ」での発言)

2015年回復期リハビリテーション病棟の入院適応の議論を徹底的にやるべき

回復期リハビリテーション病棟の入院患者さんの「入院の適応とは何か」の議論を徹底的にやるべきだ。入院でなくてはいけないのか、外来ではいけないのかと問われたとき、外来でも何とか対応できるなら入院の適応はなくなる。その辺りをもう少し厳しく議論し入院期間の短縮化に努力すべき。(2015年2月 第25回研究大会in愛媛 鼎談「変革するこれからのリハビリテーションビリテーション」での発言)

2016年リハ実施単位数とFIM利得が比例しない~病棟の立ち上げプロセスに課題はないか?

1日あたりのリハビリテーション実施単位数が多いほどADLも改善する、本来はそうした比例関係にあるわけだが、実際には1日あたり6単位から9単位までリハビリテーションの実施が認められた2006年以降、10年間で実施単位数のほうは平均3.9単位から6.3単位に1.5倍以上増加しているが、FIM利得のほうはこの10年間、15前後で横ばいのままと、比例していない。ADLの成果に関して、期待以上の成果を出す病棟がある。その一方で、成果を出せない病棟があるというように、2極分化しているのではないか。
①リハビリテーションをよく理解しているリハ科の医師と、
②自立支援技術をもつ看護・介護職がおり、
③PT・OT・ST・MSW等が病棟に一定数配属され、
④チームアプローチを成熟させながら
⑤成果を発揮する―回復期リハ病棟の「立ち上げプロセス」に課題があるのではないか?  (2016年度診療報酬改定説明会の基調講演)

2016年各病棟が地道に努力し真の実力をつけよ

回復期リハ病棟において成果を高めるには、①病棟配属スタッフの強化と、②教育研修体制の充実が必須である。
①について、医師はリハ科の専門医を1名以上専従配置し受け持ち患者数を20人以下に抑える、看護は当協会の認定コース修了者2名以上を含む看護・介護職員の規定人員以上を配置して、介護スタッフはすべて介護福祉士を配置する、PT・OT・STも各病棟にセラマネ認定コースの修了者を2名以上配置しスタッフ1人1日あたり18単位を上限にシフトを組む。
②の教育研修では病院の理念を見直し全職員で共有化する、そして、常に技術の向上に努め、チームアプローチが深まるよう多職種協働を推進する。各病棟が地道に努力し真の実力をつけることが重要である。(2016年度診療報酬改定説明会の基調講演)

2019年リハビリテーションマインド推進のための5つのスピリッツ、4つの課題

回復期リハビリテーション病棟での実践に必要なリハビリテーション・マインドとしてのスピリッツが5つある。1つ目は正しさを追求する精神。2つ目はチャレンジ精神。保守的でなく挑戦し続ける精神。回復期リハビリテーション病棟では「先生」とお互いに呼び合うことをやめた。医師もPT・OT・STもスタッフから「さん」づけで呼ばれる。まだPT・OT・STを「先生」と呼ばせる病院があったらそれはスピリッツ不足である。3つ目は損得抜きの精神。目先の利益にとらわれない精神である。ともかく損得抜きでいろいろなアクションを起こす。実績指数、算定単位数に振り回され、医療ではなく“算術”をやっている回復期リハビリテーション病棟がないかと心配している。4つ目は障がいをもっている方々とともに歩む精神。5つ目はチームアプローチである。  これら5つのスピリッツで取り組むべき今後の大きな課題として(1)人材育成(教育研修)、 (2)チームアプローチの追求、 (3)退院後のリハビリテーションサービス支援、(4)地域社会へのアプローチの4つを挙げたい。 この4つをやっても決して収入が上がるわけではない。しかし、これをやらなければ、将来先細りになる。目先の利益にとらわれず、まさに損得抜きで実践する必要がある。(2019年2月 第33回研究大会in舞浜・千葉 基調講演2「情熱」を推進力として改革を積み重ねる回復期リハビリテーション病棟」)

2019年職員教育~質的格差がなくならない理由

PT・OT・STの養成校は、学生、生徒を育て、国家資格を取らせる教育機関である。卒後 教育に関してはわれわれ現場の病院組織が立ち上がらなければならない。回復期リハビリテーション病棟協会はたくさん研修を開催しているが、少し細かく調べると、いつも決まった病院の参加であり10数年間一度も研修会に参加していない病院がたくさんある。そこではきちんと教育研修ができているのか? できていれば質的な格差はなくなるはずである。(2019年2月 第33回研究大会in舞浜・千葉 基調講演2「情熱」を推進力として改革を積み重ねる回復期リハビリテーション病棟」)

2019年朝夕の看護・介護が手薄の現状おかしい

私は、看護・介護職員の配置人員をまだまだ増やしていただきたいと思っている。しかし、皆さんがたにいっても無理だろうから、経営陣にそのことを叫んでいる。特に、モーニングケア、イブニングケアの時間帯の人員配置は回復期リハ病棟では重要である。急性期ではベッド臥床状態でのケアだが、回復期では異なる。モーニングケアの時間帯は食事、排泄、着替え……すべてが集約したADLのゴールデンタイムである。バイタルサインのチェックも投薬もある。そこに人員が一番豊富にいなくてはいけないときに、夜勤のスタッフだけでやっているのが現状である。これはおかしい。そういう制度を替えなくてはいけない。(2019年7月 第40回看護・介護研修会講義Ⅰ「リハビリテーションマインド」)